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日本なわとびプロジェクト

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(6)体力

 なわとびをするには、体力が必要です。体力がなければ、跳び続けることも、複雑な技を行うこともできません。なわとびが上手になりたい人は体力を向上させることが必要なのです。

 体力は、なわとびだけではなく、すべてのスポーツにとって大切なものです。体力が必要なのはスポーツだけではありません。私たちが健康に生きるためにも体力は欠かせません。

 スポーツ科学の専門家は、図のように体力をとらえています。

 体力は、身体的要素と精神的要素から成り立っています。
 身体的要素と精神的要素は、いずれも行動体力と防衛体力の2つに分けられます。私たちが「体力」と言うとき、たいていは身体的要素の行動体力を指しています。ここでは、身体的要素の行動体力について紹介します。なお、以下で「体力」と書かれているのは「身体的要素の行動体力」のことです。
 体力は、筋力、瞬発力(パワー)、筋持久力、全身持久力、調整力、柔軟性に分けられます。すなわち、体力はこういったさまざまな能力が組み合わさったもののことです。体力を構成する能力はすべて、トレーニングを行えば向上し、トレーニングを停止すると低下する性質をもっています。

 それぞれの能力の特性について説明します。


筋力

 筋肉が収縮することにより発揮される力のことです。最大努力で発揮される筋力を最大筋力といいます。

 最大筋力は、筋肉の太さに比例します。筋肉が太いほど最大筋力は大きくなります。

 ところが、同じ筋肉の太さ人でも最大筋力が違うことがあります。その差が生まれる原因は、力を発揮する筋線維(筋肉の細胞)の種類と大脳の興奮水準にあります。

 筋線維は大きく分けると、速筋線維(すばやく収縮する筋線維)と遅筋線維(ゆっくり収縮する筋線維)になります。収縮するときに発揮される力は、遅筋線維よりも速筋線維の方が大きいのです。したがって、筋肉の太さが同じでも速筋線維の多い人の方が最大筋力は大きくなります。

 もう一つの原因は大脳の興奮水準です。大脳の興奮水準とは、「力を出そうとするやる気の程度」です。筋肉の太さが同じでも「やる気のない人」よりも「やる気のある人」の方が大きな力を発揮できます。


瞬発力(パワー)

 瞬発力は、筋肉が瞬間的に大きな力を発揮する能力です。

 なわとびで跳び上がるとき、足の筋肉は瞬間に大きな力を出します。そうしなければ、全身を空中に跳び上がらせることはできません。ためしに、ひざを曲げた姿勢からひざをゆっくり伸ばしながら跳んでみてください。きっと、高く跳ぶことができないはずです

 重い全身を高く跳び上がせるには、大きな力を瞬間に発揮しなければならないのです。

 脚力がどれほど大きくても、足の筋肉を素早く力強く収縮できなければ、なわとびで全身を跳び上がらせることはできません。

 スポーツの世界では、瞬発力のことを「パワー」ということがあります。


筋持久力

 持久力には筋持久力と全身持久力があります。まずは、筋持久力について紹介しましょう。

 筋持久力は、筋肉が疲れないで収縮を続けることができる能力です。

 筋持久力は、さらに静的筋持久力とは動的筋持久力に分けられます。

 静的筋持久力の「静的」の意味は、筋肉が収縮したままの状態であるということです。たとえば、両ひざを曲げたままの姿勢を何分続けられるかをテストするとしましょう。このテストで測るのは、静的筋持久力です。両足の筋肉は体重を支えるために収縮しっぱなし(静的)です。その状態を長く維持する(持久力)のです。

 動的筋持久力の「動的」の意味は、筋肉が伸びたり縮んだりを繰り返すということです。たとえば、両ひざを曲げたり伸ばしたりを何回続けられるかをテストするとしましょう。このテストで測るのは、動的筋持久力です。両足の筋肉は伸び縮みを繰り返し(動的)、繰り返すことができる回数(持久力)を調べます。


全身持久力

 全身を長時間動かし続けられる能力のことです。なわとびを長時間続けられるのは、全身持久力があるからです。

 全身を長時間動かし続けるには、活動している筋肉に酸素を送り続ける必要があります。酸素が不足した筋肉は働くことができなくなるからです。

 筋肉が利用する酸素は呼吸によって外気から取り入れます。十分に酸素を取り入れるには、呼吸機能の働きが良くないといけません。

 呼吸機能の働きが良くても、それだけでは取り入れた酸素を活動する筋肉へ運べません。酸素を運ぶは血液です。血液は、心臓の収縮する力を利用して全身に運ばれます。

 全身持久力は、このように、酸素を取り入れる呼吸機能と酸素と結合した血液を全身に運ぶ循環機能の働きが関わっています。


調整力

 調整力は、神経の働きによって、運動中の姿勢を調整してバランスをとったり、運動を機敏に、巧みに行ったり能力です。

 筋力、瞬発力、持久力、柔軟性がどんなに優れていても、それぞれの能力をたくみに組み合わせないと思い通りの演技はできません。素晴らしい演技は、必要な能力を適切なレベルだけ発揮し、しかもそれぞれの能力をタイミングよく発揮することが必要なのです。

 基本の技を何度も繰り返し練習するのは、調整力を高めるために欠かせないことです。


柔軟性

 体を動かすための関節には、筋肉と腱がついています。筋肉も腱も、引っ張ると伸びる性質があります。筋肉と腱が柔らかくてよく伸びれば、関節は大きく動くことができます。反対に、筋肉や腱が硬い関節は大きく動くことができません。筋肉や腱が伸びる能力を柔軟性といいます。

 柔軟性の良し悪しは関節が動く大きさに影響するだけではありません。けが予防にも関係します。

 硬い筋肉と柔らかい筋肉があるとしましょう。この2つの筋肉を引っ張って同じだけ伸ばします。そうすると、伸びる長さは同じでも、筋肉に加わる力は硬い筋肉の方が大きくなります。伸ばす筋肉が大きくなるほど、筋肉や腱を痛めやすくなります。筋肉や腱を切ってしまうこともあります。

 柔軟性は、関節が動く範囲を広くするだけではなく、筋肉や腱のけが予防のためにも重要なのです。



湯浅景元(中京大学名誉教授)



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