特定非営利活動法人
日本なわとびプロジェクト

NEWS

ニュース
COLUMN

(8)筋力トレーニング~アイソメトリック運動~

 トレーニングはけがをしないで効果を得られるものでないといけません。

 筋力トレーニングは、筋肉、腱(けん)、関節、じん帯に大きな負荷を加えます。負荷が強すぎる、姿勢が悪いと、けがをする可能性があります。けがを防いで筋力だけ向上させるには、まず「アイソメトリック運動」を行うのがよいでしょう。


●アイソメトリック運動
「アイソメトリック運動」とは、どのような運動なのでしょうか?その答えは、「アイソメトリック」という単語の中にあります。

 図1を見てください。「アイソメトリック」は「アイソ」と「メトリック」と言う2つの単語が組み合わさったものです。

 「アイソ」は「等しい」、「メトリック」は「長さ」と言う意味です。すなわち、「アイソメトリック」は「長さが等しい」ということを表しています。

 では、何の「長さが等しい」のでしょうか?それは、「筋肉の長さが等しい」ということです。もう少し正確に言うと、「力を発揮している筋肉の長さが等しい」となります。したがって、「アイソメトリック運動」とは「筋肉の長さを一定のままで力を発揮する運動」であることが分かります。

 筋肉の長さが一定ということは、関節を動かさないで固定していることを意味します。そこで、「アイソメトリック運動」は「関節を固定したまま力を発揮する運動」だということもできます。

 「アイソメトリック運動」の例を紹介しましょう。図2を見てください。ダンベルを持ってひじを曲げています。ひじを曲げたまま固定してダンベルを保持しているのです。このとき、上腕(じょうわん)二頭筋(にとうきん)(力こぶの筋肉)はダンベルを保持するために収縮して力を発揮します。

 ひじ関節は動かないまま上腕二頭筋を収縮させてダンベルを保持するための力を発揮しているのです。こういった運動を「アイソメトリック運動」、または「アイソメトリックス」と言います。

●「アイソメトリック運動」のメリット
アイソメトリック運動には、次のようなメリットがあります。

①本人が出す以上の負荷がかからないので安全である。
 新たにけがをする危険性はほとんどない。すでにけがをしている個所を悪化させることはあるが、力の入れ具合を加減すれば予防できる。

②専用の器具やマシンを必要としない。
 基本的には、自分の体だけを使って行うので器具などはいらない。

③狭い場所でも行える。
 その場で運動するので広い場所を必要としない。

●「アイソメトリック運動」のデメリット
アイソメトリック運動には次のようなデメリットがあります。

①血流が悪くなることがある。
 筋肉を収縮させることを維持するので、その付近の血管を圧迫して血流を悪くさせることがある。

②トレーニングで用いた関節角度でしか筋力は向上しない。
 たとえば、ひじ関節を直角に保ってアイソメトリックスを行うと、ひじ関節が直角のときに筋力は向上するが、それ以外の角度では発揮される筋力に大きな向上は起きにくい。

③関節の動きがない。
 関節を動かしながら筋力を発揮する能力を向上させることは難しい。

●まず「アイソメトリック運動」を行おう
 以上のように、アイソメトリック運動にはデメリットがあります。それでも、基本となる筋力トレーニングとしてアイソメトリック運動を行うことが勧められています。なぜなら、多くのスポーツで必要とする基本的な筋肉を安全に強化できるからです。

 アイソメトリック運動で基本となる筋力を強化したら、関節を動かしながら行う筋力トレーニングに移行すると良いでしょう。

 けがをするという危険性が高い筋力トレーニングは、何よりも安全第一です。

湯浅景元(中京大学名誉教授)



BACK TO NEWS